「銀河鉄道の夜のような夜」
ラーメンズが好きで、中でも『銀河鉄道の夜のような夜』は1日に何度も見るほど好きな作品です。
ラーメンズは、主にコント舞台を中心に活動していたお笑い芸人。小林賢太郎と、片桐仁の二人からなるコントユニットです。
そんな二人が演じる『銀河鉄道の夜のような夜』(以下、『夜のような夜』)というコント作品は、その名の通り宮沢賢治が書いた『銀河鉄道の夜』の要素が随所に見られる作品となっています。
当時、「銀河鉄道の夜」を読んだことがなかった私でしたが、このコントに出会い何度も見るほど好きになりました。
その後「銀河鉄道の夜」を読んで元ネタとなっている部分を知り、また「夜のような夜」を見る。
大学時代、暇さえあればこの二つを読んでは見て、見ては読んでを繰り返していました。こんにちは、Gallery IYN スタッフです。
「オマージュ」とは?
さて、昨年2021年10月から始まった神戸阪急での展示が終わりに近づいています。
今年2022年に入ってから神戸阪急で始まった『名画オマージュの世界展』は、情報解禁から開催までの期日がない中、本当に素敵な作品を展示できたなと思います。
しかし、「オマージュ」とは一体なんなのでしょうか?
似たような言葉に「パロディ」や「パクリ」があります。
「パロディ」は、芸術作品を批判、風刺する目的で模倣した作品のこと。また、愛のあるユーモアで表現したものもパロディと呼ばれるそうです。わかりやすい例で言うと「モノマネ」がそれに当たります。
「パクリ」は、利益のためにオリジナルの作品を「流用(コピー・トレース)」したものだそうです。元ネタがバレると、盗用したことが誰の目にも明らかになってしまうためパクった本人としては具合が悪い。
では、「オマージュ」はと言うと、元ネタとなるオリジナル作品を、「尊敬する作家や作品に影響を受けてそれらをアイデアの源泉にすること」です。
独自の表現で表されるため、元ネタがわかりづらい部分もありますが、分かる人にはわかる。
元ネタを知っているとさらに面白い、と言うのがオマージュだそうです。
冒頭で書いた「夜のような夜」は、独自の表現で行われるコントの中に「銀河鉄道の夜」の要素が隠れているため「オマージュ作品」と言えると思います。
また、最近では「呪術廻戦」もオマージュなのかパクリなのかという議論もありますが、上の論理でいくとオマージュと言えるのではないでしょうか?
元ネタがわかるとより面白い。まさにリスペクトが込められた作品だと感じます。
「名画オマージュの世界展」終了にあたって
今回、「名画オマージュの世界展」では、オマージュ元として誰もが知っている名画を指定させていただきました。
「モナリザ」「真珠の耳飾りの少女」「星月夜」「神奈川沖浪裏」など
独自の表現の中に名画の要素が盛り込まれており、どこに注目しどのような意図で描いているかがとてもわかりやすく、出展作品の個性をより感じることができました。
「個性」という言葉がもてはやされている現代は特に、「作品は0から生み出されたもの」と思っている人も多いのではないかと思います。
しかし、今この世界にある創作物は、作者が生きている中でいろいろなものに触れ影響を受ける中で「1を10にしたもの」がほとんどではないでしょうか。
作者の死後何百年経過していても根強い人気があり、今もなお一目見ようと多くの人が殺到する名画。その名画に影響を受けている方も多くいらっしゃるでしょう。「名画→絵画」に限らず様々な分野で影響をもたらし、作品に反映されていると思います。
また、今回の「名画オマージュの世界展」では、出展作品の他にオマージュ元となった名画を展示しました。
そこには、名画を見て生まれた「1」をどのように「10」へと変化させ、それぞれが作品として表現したのかを見ていただく狙いがあります。
そんな脈々と受け継がれてきた創作の歴史がわかる企画展になったのではないかと思います。
写実的な絵画がもてはやされた時代。
そんな写真のような絵画を見たピカソは、「1つの視点から観察するのではなく、複数の視点から観察した物体をキャンバスという平面に落とし込む」という表現方法を取りました。
オマージュとは言えないかもしれませんが、それまで評価されてきた絵画から影響を受け、それを自分というフィルタを通して自分なりに表現した。
必ずしも、オマージュ元となる作品に似ていなければならないことはありません。
様々な作品を見て、受け取って、自分というフィルタを通した先にどのような表現があるのか。
皆さんは絵画作品を見て、何を感じますか?
名画オマージュの世界展の第二弾開催が決定しました。
会期は2023年11月10日からを予定しています。
詳細は下記URLからご確認ください。