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人間の間 in 個性について考える 2025


会期:2025年3月20日(木)~3月23日(日)

会場:Gallery IYN


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点描画
「潮騒」

 


それは確か、保育園に通っていた時分のこと。

描いた絵を褒められたことが、自身の中で大きな意味を持つ成功体験となり、それから長年に渡り 人間の間 は、絵と向き合う毎日を過ごしてきた。

高校生になると画塾に通ってデッサンと油絵を学び、油絵は大学でも専攻。

その頃から今のように風景を好んで画題に取り上げるようになったが、美術についての造形が深まるのと比例して悩みも増え、挫折感を味わった彼女は数年間絵の道から離れることになる。


しかし5年程前から再び自らの表現を模索し初め、自分の中で「これぞ」というものを探し求めた結果、絵筆をボールペンに持ち替えて、点描やカケアミ技法を用いて独自の風景画作品を描き出すに至った。

当初は水彩や色鉛筆も併用していたそうだが、昨年からはペンのみで作画をしているそう。

ようやく見つけた手法を更に磨きつつ、彼女が目指しているのは、鑑賞者が時間を忘れていつまでも見入っていられるような・・・また、眺めていると落ち込んだ気持ちがほんの少し軽くなるような絵であるという。




Q1.あなたの作風において、個性的だとご自身が感じておられる点、または鑑賞者の方から個性的と評価される点について教えて下さい。


人間の間:私の個性は、色彩感覚と拡散光描写と感じています。拡散光はぼんやり広がる光を想像してもらえればわかりやすいでしょう。


絵における個性とは、無意識に作品に滲み出てくるものと考えています。

良くも悪くも作品の印象に影響を与えているのが個性であり、それを活かす方向に進めばより良い作品作りにつながると思っています。


色彩感覚は自分自身では気がつかなかった個性です。

SNSでカラーイラストを載せ始めてから、色彩を褒めていただくことが増え、初めてそれが自分の個性だと自覚しました。

自分の色彩感覚が、自身の制作スタイルや作風と偶然にも相性が良かった結果作品に上手く活かされて良い評価につながったと思っています。


色彩感覚が先天的個性なら、拡散光描写は後天的個性と言えます。


自分の描く絵は昔からざらついて見えたりメリハリがないという悩みがあり、がんばっても直せない弱点でした。作品の印象を悪くしてしまうノイズであり短所と捉えていました。

矯正できないなら活かす方向に進もう!と決めて試行錯誤していったときに、拡散光描写との親和性に気づきました。その点を伸ばしていった結果、良い絵作りにつながる個性に変化していったと思います。


色彩感覚は鑑賞者の方から評価されて初めて気づいた個性。拡散光描写は、切り離せなかった短所と向き合って磨いてきた個性と言えるでしょう。



点描画
「夜警」

いずれの作品もざらついた仕上がりでメリハリがないという点だけでなく、もう一つ人間の間 はコンプレックスを抱えていた。

それは、モチーフの形を画面に写し取る、デッサン的な確かさがないということ。

「専門的に絵を学んできたにも関わらず、自分には基礎的な画力が足りていない」と常々感じていたそうで、描くことが苦痛になってしまっていたという。

けれど、2024年8月に制作した「夜警」という作品がひとつの転換期となった。

モチーフの形状の正確さを求めることを放棄し、ただ陰影のグラデーションのみに重きを置いてみると、驚くほどに作業が楽しく、心持ちも軽かった。このスタンスならば、描き続けることが出来る・・・

「夜警」は、これからの彼女が進むべき道筋を指示してくれたのだそう。


緻密に描き込む作風ゆえに、葉書ほどの大きさの作品でも完成には1~2週間程を要するそうで、50号もの大作になると半年がかりになる。

点描の点ひとつをとっても、ふとしたことで画面が破綻しかねないというのだから、作品に向かう際の緊張は如何ばかりであろうかと思うが、人間の間は朗らかこう語る。

「とても難しいですが、けれど同時にとても楽しいです」と。




Q2.これまで、どんなアーティストを目指して創作をして来られましたか。また、表現者として今後叶えたい夢や、近づきたい理想像について教えて下さい。


人間の間:「理由はわからないけどなんかいいな」と思ってもらえる作品を生むアーティストになりたいです。


私は自身の経験から得た「心が良い方向へ大きく動かされた」ときの気持ちを追体験するトリガーとなる作品を目指しており、それに近づくことはより良い作品につながると考えています。

感情の追体験によって鑑賞者の心に余白が生まれる、そういった効果を期待しています。

たとえば美しい景色を見て感動したあと、気持ちがスッキリしたり心が洗われたりという精神の回復を感じることがあると想います。そういった心の動きが、心の余白を生むと考えています。

そんな心の回復効果を作品に付与できればいいなと思っています。


上記は最終的な目標として掲げていることですし、現段階ではまだまだ未熟です。

なのでひとまず今は「なんかいいな」と少しでも思ってもらえる作品を作るアーティストになりたいなと思っています。

理由のない良さも心の余白につながりますから。


点描画
「境界」

嘗ては「カラー作品は自分には向いていない」と考えていた人間の間 だが、思いがけず鑑賞者から色彩を評価する感想を貰い、その一言が、モノトーンだけでなく彩りのある作品へも力を注ぐ後押しをしてくれた。

また、これまでに寄せられた全ての言葉に支えらえて今日の自分があるのだと、とも。

「絵を見て下さる方々には、本当に感謝しかありません」 そう彼女は語る。


現在は育児の隙間時間を制作に充てているそうで、24時間自宅保育であるため、作業に集中できるのは子供が眠っている時間だけ。

急に眼を覚まして夜泣きすることもしばしばで、完全に絵に没入できる時間はないに等しい。

けれど自然と描き続けることが出来ているのは、自身にとって制作が最早生活の一部となっているからではないかと、人間の間は自らを分析する。

それは決して特別な時間などではなく、寝食と同じ程に日々の習慣として、彼女の人生に根付いているのである。


風景を描く傍らで我が子の成長の様子も描き留めており、子供が大きくなった暁には一緒に見返したいと考えているのだそうだ。

普段の作品よりもリラックスした気持ちで取り組んでいるが、時にはデッサンの練習のためにと思いペンをとることもあるらしい。


今後の目標としては個展の開催や画集の第二弾作成を掲げているが、その為にはまずは良い絵をたくさん描かなくてはならない。

「これからもっと精進したいです」 そう話す彼女へ、取材の最後に次のような質問を投げかけてみた。




Q3.生まれ育った土地柄や環境があなたに与えている影響と、いま故郷について感じていることを教えて下さい。


人間の間:広島県呉市で生まれ育ち、現在も同市に住んでいます。私の作品はこの地から大きく影響を受けています。


私の実家は海に面しており、窓からは青い海に浮かぶ深緑の島々、空と海の色に同化するように青くかすんでいる遠くの島、製鉄所の高炉の錆茶色(現在は廃炉になっている)、空にかかる真っ赤な音戸大橋を眺めることができます。


この景色は自身に大きく影響を与えており、今日までの制作の根幹となっているのです。


Q1の質問で私の個性は色彩感覚と説明しましたが、これは地元の景色をみて育ってきたからこそ培われたものと思っています。

そしてここから見た夕暮れの空に心を大きく動かされた経験があり、そのときの感情を作品として残したいという気持ちは、現在も私の根っこにあります。


(取材/執筆:大石)

 

人間の間の作品を心ゆくまで堪能できる4日間

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《 人間の間 プロフィール 》

カラーペンや透明水彩を使った繊細で色彩豊かな心象風景を描く。


2015

広島市立大学芸術学部油專攻 卒業

2021

第7回jam公募展

ニッカー絵具賞受賞

2024

第79回呉市美術公募展

呉市文化振興財団賞

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