生あん in 個性について考える 2024
会期:2024年12月5日(木)~12月8日(日)
会場:Gallery IYN
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一人っ子であったので、幼い頃は家で過ごす際の寂しさを絵で紛らすことが多かったが、中学生の時に生あん は描く楽しさを見失い、手慰みに時折ペンを持つ程度になってしまっていた。
だが、大学に入ってから体調を崩してしまい療養が必要になり、彼女は改めて創作と向き合うことになる。
見舞いに来てくれた母が置いていってくれた鉢植えの花などの写生に始まり、それから自身の胸中に渦巻く不安や葛藤を画題とするようになったのだった。
画中の少女たちの嘆き、苦しみ、痛み・・・描いていて胸が詰まることもあり、創作は一種の自傷行為であるかもしれないと、生あん は考えている。
心の傷に自ら塩を塗り込み、追い打ちをかけて極限状態に持ち込むからこそ、ふっきれることもあるのだそう。
手が震えるようになり、以前のようにペン入れが出来なくなってしまったが、「デジタル画なら手振れ補正機能があるよ」という友人の助言のおかげで、彼女は手法を変えて創作を続けることが出来た。
友の存在がなければ、やり場のない思を抱えたまま、絵筆を折っていたかもしれない。
療養期間を振り返り、「友人に心の底から感謝しています」と 生あん は語る。
Q1.あなたの作風において、個性的だとご自身が感じておられる点、または鑑賞者の方から個性的と評価される点について教えて下さい。
生あん:厚塗りと彩度の高さです。
絵のテーマが暗いことが多いのですが、気がついたら明るくて濃い色をつかってしまいます。中和したい気持ちがあるのかもしれません。
それから、女の子を描くことが多いです。なんでだろう……でも可愛い女の子、いいですよね。
他の人から自分の作風について何か評価されたことはあまりありませんが、元美術教師で日本画をやっていた母からは「色彩感覚が……」と小言を言われたことがあります。わたしが1番わかってるよ……!
「大人になったら絵を仕事にしたい」と考えていた中学生の頃の生あん は、「生半可な覚悟で叶えられる夢ではない」という母の言葉を胸に、実力と実績をつけるべく、全国の学校から作品が集まる美術コンクールへの応募を積極的に行った。
どんな絵が求められているのか、過去の受賞作品から傾向を見定め、審査員に受けが良いであろう作品を描くことで好成績を残すことが出来たが、制作中はまったく心が踊らなかったそう。
こんな気持ちで絵筆をとることが、果たして本当に自分の願いであるのだろうか・・・彼女の創作への情熱は、夢を手放すと同時に失われてしまったのである。
当時は、プロになれなければ意味がない、絵を描く資格もないと思い込んでいたという。
けれど大学生になってからは、視野が広がり、知識も増え、考え方も変化した。
SNSが発達し、誰もが手軽に作品を発表できるようになったこともあり、「自分も作品を発信して良いんだ」と思えるようになったのだそう。
作品たちは全て苦しみから生まれているが、鑑賞者からは「私と同じ悩みを持つ人がいるのだと勇気づけられました」と共感の声が多く寄せられ、描くこと、発表することの意義を改めて実感できたと 生あん は語る。
幾度も幾度も辛酸を舐め、挫折を味わい、多くの涙を流してきたが、そうした経験があるからこそ描けるものがある。いつしか彼女の心には、しなやかな強さが備わったようだ。
Q2.これまで、どんなアーティストを目指して創作をして来られましたか。また、表現者として今後叶えたい夢や、近づきたい理想像について教えて下さい。
生あん:アーティストとして生きることを目指していないので、そこのご質問に関してはよくわかりません。
この創作活動も自分の心を落ち着けるために始めたもので、来年就職してからは「生あん」として続けるつもりもないんです。
就職先の企業も、絵とは全く関係ない職種です。絵で食っていく自信も手立ても全くないので、ここが引き際かなと思っています。むしろ独学で、趣味として続けてきたイラストをここまで展示していただく機会があったことが奇跡だったと痛感しています。
個人的に絵を描くことは続くとは思いますが、このような企画展に出展することはこれで最後かな、と思っています。色々と人より劣った人生ですが、このようなご機会をいただけてよかったです。
本当に、とても嬉しいです。
表現者として、何かを生み出す立場として、憧れてる方は一応います。いますが、きっと一生追いつけません。
人生で最も尊敬している方です。負けず嫌いで、誰よりもアツくて、努力家な方です。
お名前はちょっと出せないんですけど……
わたしに表現者として叶えたい夢は残念ながらありませんでしたが、近づきたい理想像は、間違いなくその方です。
“生あん”という作家名は、「あんまり生きたくない」という心情を表しており、彼女は今、その名に別れを告げようとしている。
心の中にぎっしり詰まっていた苦しさから解放されて、もう画題とすべきものが残っていないのだそうだ。
「不安定な心を絵にぶつけるしかなかった“生あん”という絵描きは、いま成仏しようとしているところなんです」 そう語る彼女の声は晴れやかだった。
成仏することが出来るのは、作品を見守り、共感し、励ましてくれた人々のおかげである。
感謝の思いを込めて彼女は「個性について考える」展に臨もうとしている。
これからは別名義で行っていたファンアート活動に専念するとのこと。
“生あん”という作家との別れは寂しいが、心の安らぎを見出した彼女に、心から祝福とエールを贈りたい。
最後に、次のような質問を投げかけてみた。
Q3.生まれ育った土地柄や環境があなたに与えている影響と、いま故郷について感じていることを教えて下さい。
生あん:わたしが生まれ育った場所は、自然豊かで、海がとてもきれいな地域です。夜は星空に天の川がはっきりと見えます。自然の美しさを実感できる場所です。
わたしが花や水、星のモチーフが好きなのは、間違いなく身近にそういうものに触れて育ってきた経験があると思います。
ただとにかく人がいません。高齢化がものすごく進んでます。俗に言う過疎地域です。
この環境は、今の自分の性格や作風にも大きな影響を与えていると思います。
地元住民同士、不便な部分をおたがい支え合って生活しているというところはとても良いんです。ただ、人と人が顔を合わせるということは、その口に上る話もすぐに広まるということで……
若い人が少ないという理由から、自分自身、そのような噂話にのぼることも少なくありませんでした。娯楽が少ないからこそそういう言葉を求めるんでしょうが、わたしは近所の人からそうやって根掘り葉掘り聞かれるのが得意ではありませんでした。誰かからかけられた言葉の裏に含まれる感情が善意なのか悪意なのか、そゆな判断を無意識にしてしまう自分がすごく嫌だったし、そういうことをしなければ生きていけない閉鎖的な環境も好きではなかった。
こう書いていると、生まれた場所にことごとく向いていない性格ですね。
(取材/執筆:)
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