南 巳一郎 in 個性について考える 2024
会期:2024年12月12日(木)~12月15日(日)
会場:Gallery IYN
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南 巳一郎は幼い頃から黙々と独りイラストの道を歩み、社会人になってから始めて持った“絵描き仲間”の導きで、インターネットで作品を発表するようになった。
絵は、描き上げたその瞬間が“完成”ではない。
誰かの目に触れ、その人の心の中で「これはどんな場面なのだろう」「このキャラクターは、きっとこんな思いでいるに違いない」など独自に膨らんだイメージを加えて貰いながら、作品は日々成長していくのである。
そう気が付いてから、意欲的にオリジナルキャラクター達を外界に向けて発信するようになり、今日に至る。
キャラクター達は、彼の想像力によって生まれてくるのだろうか。
突き詰めればそうであるのかもしれないが、実は彼等はどこか別の世界から自分の頭の中に入り込んで来て、そのまま棲みついてしまったのではないか・・・そんな風に南は考えている。
自分はその訪問者たちの様子を観察し、見せてくれるドラマや情景を描き留めているに過ぎないのだ、と。
やや奇抜な発想であろうことは重々承知しているが、それが事実か否かが問題なのではない。
「そう考えていた方が楽しいですよ」と、南は朗らかに微笑んで見せる。
Q1.あなたの作風において、個性的だとご自身が感じておられる点、または鑑賞者の方から個性的と評価される点について教えて下さい。
南 巳一郎:自分が思うには、「好きなもので固める」のではなく「色々な要素や属性を好きな形に纏める」スタンスです。
鑑賞される方々からは「勢いがある」「キャラの一人一人が自由」という評価をいただいております。
心惹かれ、キャラクターの要素として取り入れたいものは多々あるが、中でも南は“和服”が昔から好きだったそう。
一時は和のテイストに傾倒し過ぎて、どれもこれも似たり寄ったりのデザインになってしまい、行き詰りも感じてしまっていたのだとか。しかし最近は和を基盤としながらも、洋服の要素なども取り入れながら新しいコスチュームを生み出そうとしているという。
この衣服と、この取り合わせはおかしい・・・そんな先入観に捕らわれていては、どうしてもアイディアに限界が来てしまう。
自らを縛っていたものから解放され、彼はいま自由な心で再び和装と向き合っているのだ。
しかし、ただ更なる要素を加えるだけでは良いデザインには仕上がらない。
何かを加えたのなら、何かを引かなくてはならないが、ではどこを引くべきなのか。
加えるものも、果たしてそれで良かったのか・・・
そうした模索も含めて、創作は楽しいと南は語る。
南が興味を抱く対象は、時の流れと共にどんどん増えていく。
或る時までは全く気にも止めなかったものが、街を歩いている際にふと目に飛び込んできて、心に残る。
今は未だ自分が気付いていないだけで、これから描き手として対峙することになるモチーフで世界中は溢れ返っている。
それは何と素晴らしいことだろうか。
Q2.これまで、どんなアーティストを目指して創作をして来られましたか。また、表現者として今後叶えたい夢や、近づきたい理想像について教えて下さい。
南 巳一郎:絵を描くにあたって「南巳一郎」という存在は、私が思い描く、頭に浮かぶ世界を絵という形で出力する為の道具であるべきだと考えています。
今後も私自身は「キャラクター」と「世界」が主役であり続ける為の道具でありたいと願っています。
独学でイラスト手法を身に付けた南は、「どう描いたら良いかわからない」という事態も決して悪い事ではなく、寧ろ一から十まで教えられた手順をなぞるだけでは、創作の醍醐味が失われてしまうと考えている。
自分の望む形に仕上がれば、その描き方が正解であると言えるが、そもそも自らの目標も絶対的なものではなく、彼が身を置いているのは、正解も不正解もない表現の世界だ。
大人になってから自覚したことだが、南は幼い頃から「必ずしも他者と価値観を擦り合わせて、周囲に馴染もうとしなくても良いのではないか」と薄々感じていたという。
団結力も勿論大切であるが、多くの人が好きなものを自分も無理に好きになろうとしなくても良い筈だ。
まして自分の中に確固たる軸がなければ、創作活動は続けられない。
どんな場所で、どんな作品を発表する場合にも、この“軸”を鑑賞者に見て貰えるように、感じてもらえるようにと意識して制作に打ち込んでいると南は語る。
彼に、次のような質問を投げかけてみた。
Q3.生まれ育った土地柄や環境があなたに与えている影響と、いま故郷について感じていることを教えて下さい。
南 巳一郎:私が生まれ育った場所は、決して嫌いではありませんでしたが、そこの気風に慣れはしても馴染めているとは言えませんでした。
ただ、その環境でなければ―良きにしろ悪しきにしろ―今の私が自分であり続ける事も出来なかったと思っています。
(取材/執筆:大石)
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