iart.itsumi in 個性について考える2024
会期:2024年12月12日(木)~12月15日(日)
会場:Gallery IYN
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iart.itsumiが描き出す無垢で優しい微笑を浮かべた天使や童子たちは、目には見えないけれど、人生のあらゆる局面で彼女を確かに見守ってくれている特別な存在だ。
病に倒れた夫を支え、家庭を守らねばならないというプレッシャーの中で、絵を描くことで彼女は不安や苦しみに耐えることが出来た。
昨年6月に夫を看取った後も、絵は彼女を励まし、勇気づけてくれていたが、年明に父親を見送ってからは所謂“燃え尽き症候群”になり、しばらくは創作に心が向かうことはなかったそう。
絵を描くことよりも寧ろ日々の生活を整えたいと家事に専念し、絵のことが完全に頭から離れた訳ではなかったが、「私よりも素敵な作品を描く人はたくさんいるのだし、私なぞが創作を続けて良いものだろうか」と考えることさえあったという。
SNSの投稿も停滞していたが、しかし過去の作品に寄せられる“いいね”やコメントが、弱気になっていた彼女に力を与えた。
夫の闘病中は、描くことは自分の精神状況を整えるための術だった。しかし今は自分のためだけでなく、自分の作品を評価してくれる人、好ましいと感じてくれる人のためにも絵を描きたいと思いを新たにして、iart.itsumiは再び創作と向き合い始めている。
Q1.あなたの作風において、個性的だとご自身が感じておられる点、または鑑賞者の方から個性的と評価される点について教えて下さい。
iart.itsumi:"⭐︎鉛筆の柔らかな線
⭐︎温かみや癒しを感じる柔らかな作風
⭐︎色彩の美しさ"
厚口画用紙に6Bの色鉛筆で軽やかに人物の輪郭を描いてから、絵具ではなくネイルカラーで着彩をする。
それがiart.itsumiならではの描画技法だったが、創作から離れていた期間にネイルカラーが固まってしまっていたので、取りあえずの代用品として他の化粧品も試して見ると、思いの外良い効果が得られた。
チークはまるでパステルのようにふんわりとした表現が出来るし、それだけでは印象が軽くなりすぎる場合はクリームタイプのアイカラーを画面にしっとりと馴染ませる。
ネイルカラーも買い直して使用しているが、新たな描画材料も加わったことで作風がやや変化、発展したという。
また、絵を描く上での心持も少し変わったそう。
以前は、「作品を発表するからには多くの人に見て貰わなければ。その為にはどうしたら良いのか」と、必死だった。
しかしブランク期間も自分の絵を見出してくれた人があったように、作品は出会うべき人と自然な流れで巡り合うものなのだ。
そう考えるようになってからは肩の力が抜けて、気負い過ぎてしまったり、思い詰めたりすることもなくなったようである。
Q2.これまで、どんなアーティストを目指して創作をして来られましたか。また、表現者として今後叶えたい夢や、近づきたい理想像について教えて下さい。
iart.itsumi:見る人が、ホッとするような、癒しや温かな気持ち、そばに置いて見るたびに幸せな気持ちになるような表現ができるアーティストを常に目指しています。今後の夢は、人に幸せを届けることができる仕事をすること。例えば何かの挿絵であったり、絵本であったり、パッケージデザインであったり、私の絵を必要とする方と一緒に、幸せを届けるお仕事ができたらとても嬉しいです。
余白を生かし、優しい空気感を演出するiart.itsumiの作風は、子供の頃によく読んだ絵本の影響が強く表れているのかもしれない。
「ぐりとぐら」シリーズや「たろうのおでかけ」など、白い背景から空間の広がりが感じられる絵が特に好きだったそう。
また、育った家の窓から臨む景色はとても見晴らしが良く、田んぼや草原の景観はとても開放的だった。
少女時代に吸い込んだ爽やかな空気、眩い日差し、心地よい風と草花のにおい・・・
それらは彼女の心と作品の内に、今も息づいているのだろう。
その反面、ビビッドな色調で輪郭線のくっきりとしたポップな作風の絵も好きで、以前幼稚園に勤めていた折などは、園児の為にそうした絵もよく描いていたのだとか。
その嗜好もまた、紛れもなく自分の個性。
ここ最近は片方だけが突出していたが、これからは双方の世界観を同時に展開させていきたいとiart.itsumiは考えている。
彼女に、次のような質問を投げかけてみた。
Q3.生まれ育った土地柄や環境があなたに与えている影響と、いま故郷について感じていることを教えて下さい。
iart.itsumi:私が生まれ育った土地は、緑や自然、畑や田んぼがたくさんあって、幼い頃は草原で遊んだり、川遊びをしたり、田んぼでおたまじゃくしやザリガニを捕まえたり、草花の香りや川の水の冷たさ、木の幹の触った感じ、空の青さや風の気持ち良さなど、五感を通して物事を体感することがたくさんできた環境でした。今でも鮮明な記憶として残るそれからは、私の中心を強く形作っている要素だと感じています。故郷は今の私を作ってくれた大切な大切な土台です。目を閉じればいつでも鮮やかに甦る風景。それは現在の作風にも影響があることは間違いないと感じています。
(取材/執筆:大石)
iart.itsumiの作品を心ゆくまで堪能できる4日間
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