衣川布沙子 in GIFT2024
会期:2024年3月29日(金)~4月1日(月)
会場:ART STORE IYN
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衣布沙子 経歴
・2017年 川渕長之先生に出会い、水彩画を描き始める。
・2018年 グループ展『Lively3人展』名古屋市民ギャラリー
・2020年 個展『Fusako展』茶房ギャラリー鬼無里
・2022年 フランス『サロン ド リ アート ジャポネーズ』出展
・2023年 個展『心もようの水彩画』茶房ギャラリー鬼無里
※写真は光調整などの加工をしております。
※展示写真は保存・SNSでの使用全て可能です。
日常の中でふと目に止まったものや、四季折々の花々。
それから、心に浮かんだ情景を描いた心象風景・・・・・・
衣川布沙子の水彩画作品を構成するものは、絵具と水と、それから彼女がモチーフを通して感じた様々な“思い”だ。
たくさんの実を付けて首を垂れた向日葵の花からは、一夏を全力で咲き切ったという清々しさと誇らしさ。また 桜を描いてみれば、すべての人の花盛りが訪れるようにという願いが、自然と胸の奥からこみ上げる。
そうした感性は、衣川が歩んできた人生の、すべての瞬間が積み重なり育まれたもの。
彼女の目と心を通して、花々や景色や人物・・・即ちこの世界はどう映っているのか。私たちは作品を通して、それを感じることができるのである。
しかし 嘗て衣川は、長らく「絵を描きたい」という気持ちを持ちながらも、何を描けば良いのかわからないという状況に陥っていた。
趣味として漫画やイラストの模写をしていた子供時代から、大人になるにしたがって、紙に向かっても描きたいものが思い浮かばなくなってしまったという。
そのもどかしさを、仕事と育児に追われている間は忘れることができていた。
しかし子供が手を離れて時間に余裕が出てくると、再び創作への憧れと共に、描くべきものが見つからない焦燥感が舞い戻って来たのだそう。
そんな彼女にとっての転機は、友人に誘われて足を運んだ展覧会で、水彩画家・川渕長之と出会ったこと。
当人の作品の魅力は勿論だが、川渕氏の運営する水彩画教室の生徒たちの、各々の個性が光る作品に衣川は大きな衝撃を受ける。
一人の師から教えを乞えば、なにかしら共通の雰囲気が生徒たちの作品に見られて然るべきだが、彼等の作品には画風の類似性は一切みられず、見事に皆が異なる世界観を描き上げていた。
「いったいどんな教え方をしているのだろう?」
その答えを知るため、衣川は後日教室に赴き、川渕氏に師事することになったのだった。
Q. 創作コンセプトや創作活動を始めたきっかけや経緯を教えてください。
衣川:コンセプトは「気持ちを描く」、です。数年前、水彩画の素晴らしい先生に出会ったのがきっかけで、水彩画を描き始めました。子どもの頃から絵を描くのが好きでしたが、長じるにつれ、上手くなければ描いてはいけない、また、何を描いていいかわからない、と描けなくなり、生活に追われるまま何十年も経ってしまいました。
それが先生と出会ったことで描けるようになりました。先生の口癖は「あなたの生き方を描いてください。ご自身を描いてください。」でした。先生は、誰の真似でもない、気持ちが表れる絵が描けたとき、それこそ手放しで惜しみなく褒めてくださり、絵に込めた気持ちに共感してくださいました。嬉しくて何枚も何枚も描くようになりました。
残念ながら先生はご高齢だったこともあり亡くなられましたが、今でも描く時は先生の言葉を思い出します。
教室に通い始めた時、水彩に関して衣川はまったくの初心者だったが、はじめて習う技法以上に新鮮だったのが、師の“教えない”指導方針。
必要最低限の画材の扱い等は勿論伝えるが、それ以上は「教えちゃうと、僕の描き方になっちゃうからね」というのが彼の口癖だった。
各々が感じたままに表現した作品を、時間の許す限り真剣に向き合い、言葉をくれるので、生徒はみな川渕氏に見てもらうことを楽しみに描画に没頭していたという。
その絶賛を励みにして、モチーフに自分の思いを投影して描くというスタイルを衣川は身に付けた。
制作中、しばしば思い通りにならない水彩の特性に悩んできたが、段々とコントロールし過ぎず絵具の流れ水の流れに任せ、偶然性から生まれる効果も楽しめるようになってきた。
そうした心境に到達できたのも、「上手く描こうとして悩むのでなく絵にお任せしたら良いんじゃないですか」という恩師の言葉のおかげ。
気負わず のびのびと絵を描けるようになり、衣川は本来やりたかったこと、進みたかった絵の道にようやく戻ってくることができたのだった。
Q.あなたの作品で、鑑賞者にどんな気持ちをGIFTしたいですか。また展示に向けての意気込みも教えてください。
衣川:「共有」です。ポジティブでもネガティヴでも誰しもがもつ気持ちを「ああ、そんなことってあるよね。」って作品のどれか一つでも通して、共感してもらえたら嬉しいです。そして、見てくれたその人が感じたこと、思い出したこと、経験したこと、のお話、物語を聞きたいです。共有です。
今回の作品については、「寄り添う」です。人・動物・植物が寄り添う姿を通して、温かさ・喜び・安心などが伝わったら嬉しいです。
昨年11月に個展を開催し、そこで全力を出し切った衣川は現在は次の創作に向けて充電中だ。
しかし制作の手を休めている間も、常に描画対象を見過ごさぬよう心のアンテナは常に立てている。
また、よく師が語っていた「芸術の本質」に少しでも近づき、自分の表現したい思いが、より明確になればと願っているとも話してくれた。
休息の時を終えたら、衣川布沙子の“心もよう”を描いた素晴らしい水彩画が、新たに数多く生み出されるに違いない。
彼女に敢えて、社会や自分には足りないと感じているものについて聞いてみた。
Q.現代社会に欠落していると感じる事や、自分自身の体験等から欠落していると感じる事を聞かせて下さい。
衣川:ありのままでいいということ、安心、が欠落していると思います。そのままではいけない、足りないと思わされて、自分を含めほとんどの人がその誤解を信じ込んで、物質や人間的な成長を求めて必死に頑張ってる。ホントはそのままで十分だとしたら、競争は要らなくなり、お互いの個性を生かしながら、安心して楽しんで生きられると思います。理想論であるかもしれないけど。
(取材/執筆:大石)
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